
本記事の内容
1.書評(テキスト批評)はテンプレートを押さえればOK
2.書評の書き方:テンプレートをふまえた例文
3.書評レポートの例文をふまえたポイントの解説
この記事の信頼性
執筆者は文系院生で、レポート・報告書の添削歴も豊富
学会誌や紀要、一般書に10本以上の論文・コラム等を寄稿
大学生になって、本がレポート課題になるとき、読書感想文ではなく「書評(テキスト批評)」様式で書くのですが、慣れてない人には難題。
というのも、書評の書き方は「論評」という、論理的・客観的な本の評価がメインになるからです。


-
大学での書評レポート(テキスト批評)の書き方【例・テンプレート有】
続きを見る
-
大学のブックレポート|要約の書き方は〇〇にならえばOK!【簡単】
続きを見る
書評(テキスト批評)はテンプレートを押さえればOK
本記事の書評レポート(テキスト批評)は、5項目で構成されているテンプレートを使います。
このテンプレートは、河野哲也氏『レポート・論文の書き方入門』にもとづいたものです。
書評ではない、一般的なレポート課題の型となる「序論・本論・結論」と比較すると、
序論部分に相当 レポートの目的と本論の大まかな構成を示す(1)
1.目的の提示
本論部分に相当 テキストを要約し(2)、論点・問題点を提示(3)、なぜ問題点となるのかの議論を進める(4)
2.要約
3.問題提起
4.議論
結論部分に相当 書評全体を振りかえり、結論を出す(5)
5.まとめ
5項目はこのように対応していますね。
このテンプレートに沿った、大学での書評レポートの具体的な書き方を、次に例文付きで確かめましょう。
▼テンプレート・ポイントの詳細は以下の記事▼
-
大学での書評レポート(テキスト批評)の書き方【例・テンプレート有】
続きを見る
書評レポートの書き方:テンプレートをふまえた例文
以上のテンプレートをふまえて、自分が学部時に書いた書評レポートの例文が、以下になります。

タイトル 車離れに占める「環境」要因について
学生番号 氏名
書誌情報 山岡拓, 2009, 『欲しがらない若者たち』日本経済新聞社(日経プレミアシリーズ), pp.16-44.
(1) 目的の提示
本書・第一章では「車」への興味を手がかりとして、現代の若者についての考察がなされている。本稿では、車を取り巻く諸制度を取りあげ、本章で展開されている議論の補足を行なう。(2) 内容要約
本章冒頭で著者は、消費者の購買理由を「必要性」「利便性」「差異性」の三つに区分し、現代の若者は利便性と差異性への関心が特に薄いことを指摘する。続いて、車の保有についてのデメリットとして経済的負担を、メリットとして差異表示(差異性)記号の役割を取りあげる。そして、現代の傾向として若年層を主としたメリットへの関心の減退を示し、その後「図表3 モノ保有率の増減」より、その傾向は車に限ったものではないことを説明する。また保有率が低下する中で、欲しい人の比率(購入意欲)の低下も生じており、それは衒示的消費というライフスタイルから人々が離れてつつあるからだと、著者は主張する。
こうした変化の兆しは今(2009年時点)の30代にもうかがわれるが、30代と20代を詳細に見ていくと、その行動原理や価値観は大きく異なっている。まず、親世代の文化と情報化という現象が、子世代のファッションや音楽などのサブカルチャーの嗜好に影響を与えており、その点の異なりを指摘する。次に、上昇志向や「大きな物語」という神話への意識の異なりを指摘する。それらは、商品知識の豊富化と消費意識の希薄化という、二つの面での異なりとなってあらわれていると、著者は説明する。(3) 問題の提起
本章の考察の軸は、車を差異表示記号として取り扱い、その魅力への興味が減退していると指摘している点にあるが、この点について、車を取り巻く日本の環境はその主張を補うものであろう。つまり日本では、地理的、制度的にみても、車を魅力のあるものとして取り扱うことが困難であるという環境である。(4) 議論
「車はタダでもいらない」(p.22)という言葉があらわしているのは、保有時の負担が割に合わないということだが、その割に合わないという考え方から抜き出すことができるのは、デメリットの一方でメリットを勘考する思考である。そのメリットが小さくなっている、つまり車の持つ差異表示記号としての魅力が減退し、それが車離れを起こしているという著者の主張には、妥当性があると思われる。
しかし車には、差異性以前に機能(スペック)があり、その部分について、著者の論考は雑駁な感がいなめず、そのため、機能から「純粋に」車をみた場合も車には魅力がないのか、という問題提起もできよう。この提起については、日本で車を持つときに関わる地理や制度をもって、その反論とすることができる。
例えば、日本の人口は首都圏に密集しており、それらの人々が仕事もしくは娯楽の面で都心部へアクセスしようとした場合、車を使ったアクセスには不便さがともなう。連休時期などに地方へ出かける際も同様で、Uターンラッシュなどといった報道をみれば、その不便さが分かるだろう。地方では、それらの不便さは少なく、必要性という点での魅力もある。しかし、アメリカなどと比較した場合、絶対的な必要性はとぼしい。
また、制度的には、自動車検査登録制度(車検)にかかる費用がまずは挙げられるが、これらは日々の維持費を考えると、それほど大きな比重ではない。最高で100km/hという制限速度と、それを超えて走ることのできる環境(サーキット)の少なさや、オフロード車を活かせる走行環境の整備が不十分である点が、機能を取りあげる際には問題となろう。
そして、これらから考えられることは、車離れは時代背景を原因として起きているというよりは、元々の環境が原因となって起きているということである。つまり、車の機能を活かせる環境ではないため、日本では、機能が車の魅力として働く余地が低いのではないか、という反論である。(5)まとめ
車の差異ではなく機能という観点において、著者の論考が持つ雑駁さを指摘し、その観点から著者の主張を補う形での議論を展開した。しかし、車離れについての問題点を環境に設定したとき、若者は「モノを買うこと」の意味を見失った(p.44)のではなく、モノを買うことに意味がなかったことに気付いた、という考え方もできるのではないだろうか。
新書の一章分の書評(テキスト批評)でしたが、どうだったでしょうか。


▼書評に使ったテキストはこちら▼
書評レポートの例文をふまえたポイントの解説
ここでは、例文で赤線にした9箇所に焦点をあてて、読みにくさの原因を探っていきます。
まず、書評レポートの書き方のポイントは、
- 読み手に優しい文章にする
- 議論には一貫性をもたせる
- 自分自身の意見を主張する
- データを使って主張をおぎなう
- 最後のチェックもしっかりと
この5つになります。


読み手に優しい文章にする
要約部分で、例えば「衒示的(げんじてき)消費」という語が出てきましたが、語句の説明が文中に出ていなくってわかりにくいっ。
なので「見せびらかす(誇示する)ための消費」と一言説明を加えておけば、読み手にも優しくなります。

自分自身の意見を主張する
自分の場合は、著者の主張を真っ向から反論するつもりではなく、ある程度の共感をもっていたので、断定表現を避けています。
文末で「考え方もできるのではないだろうか」と、言い切っていない部分が、断定表現を避けた部分ですね。
もちろん、共感も自分の意見になるので、このような書き方もできるものの。
可能であれば、賛成か反対か、どちらかの意見を主張するのが望ましいです。
議論には一貫性をもたせる
以上の例では、日本の車をとりまく「地理や制度」という「元々の環境が原因」で、車離れが進んでいるのだと議論をしています。
一方、文章冒頭では「車を取り巻く諸制度を取りあげ」となっていて、キーワードがわかりづらいっ。
なので、「元々の環境」や「諸制度」という語句を、「地理や制度」にすれば。
読み手にとっても、キーワードが明確になって、一貫した文章という印象を与えられます。

データを使って主張をおぎなう
このレポートでいえば「(車検)にかかる費用」や「日々の維持費」、また「環境(サーキット)の少なさ」などが当てはまります。
これらのうちで重要な項目は、車を思いっきり使える環境としてあげた、サーキットの設置状況になりますね。

最後のチェックもしっかりと
誤字・脱字や書式、変な表現がないかをチェックするわけですが。
問題の提起で書いていた「魅力への興味」という言葉は、「頭痛が痛い」に似たような違和感が。。


書評レポートの書き方の関連記事
- 「書評レポートの書き方・テンプレ」
- 「書評レポートの書き方・例文(本記事)」
- 「書評レポートの要約部分の書き方」
- 「要約サイト『flier』が学生向けな理由」
- 「flierのキャンペーンリンクと学割プランの登録方法」
※ いずれも別タブで開きます
まとめ:例文を反面教師に、より良い書評を書こう
ここまで、大学で出される書評レポート(テキスト批評)の書き方について、記事執筆者による例文を紹介してきました。
要は、自分の主張を感情論ではなく客観的に示して、キーワードとなる部分がぶれていなければ、良いレポートが書けるという話ですね。


-
大学での書評レポート(テキスト批評)の書き方【例・テンプレート有】
続きを見る
-
大学の勉強についていけない学生に向けたロードマップ【後悔なき大学生活を】
続きを見る